満月の日、高尾の友人への手土産にといつもの和菓子屋さんへ立ち寄ったら、お店の一角に遺影とお花が飾られていた。
一瞬 え? となって気づいたら涙がひとつこぼれ落ちていた。
頼んださつまいもどら焼き を奥に取りに行った息子さんに向かって「お父さん亡くなられたんですか?」と大きな声で叫ぶように尋ねた後、少しづつ状況が分かってきてそのまま無言で手を合わせた。
いつもお店の左の隅に必ず小柄な姿がちょこっと見えた。
自転車で通りがかっても、扉を開かなくてもそれが当たり前の風景だった。
ご機嫌がいい日と悪い日と、あからさまに分かりやすいところがわたしは好きだった。
きっとみんなも好きだったと思う。
帰り際に、息子さんが
「手を合わせてくれた人にはこれを差し上げて。と親父が言ってたんで、ひとつ入れておきますね。」と袋の中になにかを入れてくれた。
わたしは
「さみしくなりますね。ありがとうございます。」
とことばを返してそのまま高尾へと向かった。
お月様が登る頃、友人の住む家に着いて少しゆっくりした後、雲間からようやく顔を出した満月を高台からひとり眺めていた。
この日の2.3日前からそわそわ気になって一日遅れで辿り着いた高尾で。
紙袋の中には 小さな兎のお饅頭がひとつ。
嬉しいような
切ないような
悲しいような
通じ合えたような
そんないろいろな気持になって食べずにまた袋にしまった。
誰かが遺した気持
思いを代わりに伝え継ぐ気持
そのふたつの思いを受け取れた気持
温かかったな。
ありがとうございました。
11.07.2014